「無花果の内側に花が咲く理由を知っているか?」
名前:エヴァン・"ダミュア"・クリスト
略歴:
男は“死後の肉体が生前と同じ姿で保全されている“という状況に極めて強い執着を持つ死体性愛者である。
生来の遺体に対する度を越した倒錯に加え精密なエンバーミングと黒魔術の心得を経て己の欲求を満たすべく修復士としての道を選び、今日に至るまで理知的な表の顔と猟奇的な嗜好の二面性からなる爛れた生活を続けてきた。
呪いと混沌の地に構えられた職場であるため周囲には看過されているが、修復作業中は過敏に反応してしまうため人目を憚ってダンジョンに潜入し単独で蘇生を行うことが多い。
「鬱屈してて辛気臭い場所だった…だから私の手で美しく作り変えた」
出身地である人口わずか十数人の小さな村では魔術や解剖学を学ぶ傍ら診療所などを営んでいたようだが、ある日些細なミスで患者を死なせてしまったことをきっかけに衝動のタガが外れてしまい、入院していた人間を恣意的に殺害し亡骸を生前と寸分違わぬ状態に仕立てた後に家族の元に送り返すという奇行を繰り返した。
精巧な加工と刻まれた術式により一人でに動く遺体は初めは人々の生活に馴染んでいたが住人が違和感に気づくにつれ村は不安と狂気に支配されるようになり、体調不良を訴え病院に通う人間が増えると同時に少しずつ村を闊歩する死者も増えていった。
最後の一人が死体に置き換わると村の真実を知るものは彼一人となり、以前と変わらぬ村民が以前と変わらぬ生活を繰り返す静かな村は誰にも悟られず「沈黙の村」として人々の記憶から消えていく。
彼らは人見知りで、あまり他人と関わりたがらないのだ。
「もうあんな芸当ができる根気も体力もないんだよなあ…いや、もう一回挑戦してみるべきか?」
ルーティンに沿って行動し続けるそれはアンデッドではなく“剥製を使った自律人形”というフレッシュゴーレムに近い構造のため、綿密な防腐処置が施されているとはいえ経年劣化で形が崩れてしまう。
家族が住む村へ帰省を行なっているという口実のもと男はその実自らの最高傑作である動く死体たちのメンテナンスを行うために定期的に村を訪れている。
塔の仕組みによる死者蘇生の話を耳に入れた当初は願ったり叶ったりの職場と踏んでいたようだが、彼が興味を示すのはあくまで“魂のない器としての死体が動き出すこと”であり蘇生された人間が生者として扱われている状況には満足がいかないらしく常に悶々とした気持ちを抱えて仕事に勤めている。
休日の楽しみは市内で本物の死体を集めに行くことであり、治安の悪い地域に好んで赴いているそうな。
「いや…違う。違う、違うんだ。こんなはずでは…………」
性格と特徴:
普段の振る舞いは思慮深く慎重な印象を与えるがその本性は筋金入りの変態であり、恋愛対象は遺体であれば老若男女問わず異形までも喰らうオールラウンダー。惨殺体や変死体に興奮し、とりわけ長い黒髪の人物を好む傾向がある。故に人間に対する下心もないわけではない。
自身の嗜好に対する罪悪感や後ろめたい気持ちがまるでなく理解を示す相手に対しては饒舌になりがち。
殺人、誘拐、墓荒らし、死体損壊など現在に至るまでの罪状はキリがないが、ノイヴェーレに住み着いて以降狩りはあくまで自分の身に危険が及んだ時の最終手段として控えているため積極的に他者を害することはない。トドメが刺せそうな時はきっちり乗っかる。
揉め事にからっきしというのはあくまで経歴をカバーするべく吹聴している内容であり、正面きっての戦闘は苦手とするものの単騎で遺体の回収ができる程度に場数を踏んでいるため(能力値の範疇で)それなりに危機的状況を回避できるようだ。腰が爆発しそうなのはガチ。
──名前?──
「あれは6───いや、7歳の時だったかな。まだ小さかった妹が流行病で死んだんだ。硬い寝台の上で目を半開きにしてハエにたかられている彼女の姿を見た時───よく覚えてはいないが、何かとても我慢できなくなって、自分自身を触って、そのことを親父に見られて───尿に血が混じるくらい殴られたことはあるか?一日中口の中が錆の味がして───別にあの家を恨んでいるわけじゃない。理解できないものを前にした人間の当然の反応だ。ともあれ、親父は俺を家から出さなかった。───体の中にいる───を追い出すために朝昼晩鞭に打たれて祈りを捧げた。我ながらよく頑張った方だと思うよ。虐待?まさか───」
「ダミュア・クリスト、享年4歳。 ───最愛の家族であり、僕の初恋だった。」
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彼が肌身離さず身につけている指輪には稚児とおぼしき遺体の一部が封されている。
能力など:
スキル【頸動脈寸断《Open vein》】カテゴリ:素早さ、器用さ
人体にまつわる卓越した知識により的確に出血多量を狙った攻撃ができる、シンプルな急所狙い。主に医療用の小型のメスを使用するため間合いは短く受け流しが容易。
獣や装甲のないモンスターに対してもある程度は通用するが、スライムやアンデッドなどの出血しない相手には完全に無効化されるためもっぱら対人用である。
スキル【腐った外皮の呪い《Curse of the Putrid Husk》】カテゴリ:集中力、死霊術
対象の意識を死者の見る夢と交換し、己の肉体が朽ちて死にゆく追体験を相手の精神に植え付け恐怖を誘う。コストはその日のMP(精神力)の半分。範囲は広いが導線があり、対象の姿をしっかり見据える必要があるため戦闘には不向き。
対象の精神力が低いほど成功率が高く、逆に真社会性のモンスターなど死を恐れない存在には無意味な魔術である。
魔道具を起点に自らの視覚野を通して発動させるため術者も同じ景色を見ることになるが、内容によっては本人も精神的苦痛を受けたり(稀にだが)絶頂して失神することも。
スキル【黄泉からの情婦より《Till death do us part》】カテゴリ:死霊術
死者の領域を意図的に“穢す”ことにより武具に負の属性を乗せる強化魔法。使用するたびに魂が冥府の怒りを買い死後の苦しみが増すという。
傷口に腐敗や壊疽などの弱体化を付与し、損傷の大きさに比例して悪化させる。治癒を怠ると深刻な後遺症を残す。
対象の免疫や再生能力に大きく左右されるため、即効性に欠ける上に回復魔法や聖水で効果が打ち消せるので手間の割に嫌がらせ程度のデバフでしかない。
媒体なしで使える唯一の黒魔術だが発動の際は対価として術者の血液もしくはそれに類似する生きた体組織を捧げる必要があり、大体の場合はアレで済ませている。
習得した経緯は不明だが昂った時にうっかり誤爆することが多いのでおそらく偶発的なもの。